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2007.11.10

柳都物語  第62回・麻美子のノート(2)

【柳都物語 第62回・麻美子のノート(2)】

 麻美子のノートは、さらに続いた。

「さて、移転先になった2つの島ですが、人が住んでない島ではありませんでした。
 寄居島には、寄居村がありました。
 と言っても家はわずかで、畑がほとんどでした。

 長岡藩は、寄居村には、西川が干上がった跡地に移ってもらうことにしました。
 今の『寄居町(よりいちょう)』という地名は、そのとき寄居村が移ってきたなごりだそうです。
 もうひとつの白山島には、白山神社がありました。
 社(やしろ)は島の南端に建っていましたが、島のそのほかの土地も、多くが神社のものでした。
 そこで長岡藩は、社のある南端を除く土地を神社から譲ってもらい、代わりに島の外の土地を寄進しました。
 こうして、2つの島の東側を船の停泊する湊にして、新しい新潟の町はつくられることになったのです。

 新しい新潟の町は、元の町並みをほとんどそのままにして移す計画でした。
 でもひとつだけ、元の町とは大きな違いがありました。
 それは、新しい町では堀割が掘られたことです。
 元の新潟の町は砂丘の上に建っていたので、堀割はなかったのです。
 それでは、どうして新しい町では堀割が掘られたのでしょうか。
 それは、新しい町をつくるためには、家を建てる材木を運搬したり、引っ越しの荷物を運んだりしなければならなかったからです。
 それには、船を使った方がずっと便利だったのです。
 もちろん、堀割があれば、町ができたあとからでも便利でしょうから。

 堀割のうち、信濃川と平行な堀が2本掘られました。
 信濃川に近い東のほうから、『片原堀(かたはらぼり)』『寺町堀(てらまちぼり)』といいました。
 『片原堀』は、元の新潟の町に『片原通(かたはらどおり)』という通りがあって、その道筋が新しい町では堀になったので、その名前になりました。
 『寺町堀』は、この堀の西側に砂丘の上からお寺が移ってきて、それがまた『寺町』と呼ばれるようになったので、その名前になりました。
西堀通り東堀通り   『片原堀』『寺町堀』の名前は、江戸時代が終わるまでずっと使われてきました。
 明治時代になってから、県令(今の県知事)の楠本正隆(くすもとまさたか)によって、『片原堀』は『東堀(ひがしぼり)』に、『寺町堀』は『西堀(にしぼり)』に名前を変えられました。
 そしていつしか、『片原堀』『寺町堀』の名前は使われなくなりました。
 信濃川と平行に南北に流れるこの2本の堀を、縦堀といいます。
 新潟の町では、信濃川と平行な道路のことを『通り』といいます。
 つまり縦堀は、『通り』と平行して流れる堀です。
 これに対して、縦堀と信濃川をつなぐ堀を横堀といい、最初に4本の堀が掘られました。
 信濃川上流の南のほうからいうと、『白山堀(はくさんぼり)』『新津屋堀(にいつやぼり)』『広小路堀(ひろこうじぼり)』『御祭堀(ごさいぼり)』です。
 『白山堀』は、白山島の南端にあった白山神社脇に掘られたので、その名前がつきました。
 あとの3本は、元の新潟の町では『小路』だったところです。
 『小路』とは、『通り』と直行して『通り』同士をつなぐ道路のことです。
 その『小路』が新しい町では堀になって、『小路』の名前の『新津屋小路(にいつやこうじ)』『広小路(ひろこうじ)』『御祭小路(ごさいこうじ)』が、そのまま堀の名前に変わりました。
 『広小路堀』だけは、『小路』が取れずに『堀』が付け足されていますが、これはたぶん『広堀(ひろぼり)』では、言いづらかったためじゃないでしょうか。
 後になって、『新津屋堀』と『広小路堀』の間にあった、『道心小路(どうしんこうじ)』も堀に変わりました。
 その堀はなぜか、『道心堀(どうしんぼり)』ではなく『新堀(しんぼり)』と呼ばれることになり、これで横堀は5本になりました。
 この5本の横堀を、『一番堀(いちばんぼり)』から『五番堀(ごばんぼり)』と呼ぶように命じたのは、やっぱり県令の楠本正隆でした。
 でも、この名前の方はほとんど普及しませんでした。
 今では、『一番堀通町(いちばんぼりどおりちょう)』という地名がひとつ残るだけです」

【次回投稿は11月24日の予定です】→柳都物語「第63回・麻美子のノート(3)

緑亥館通信「柳都物語・第62回について
物産コーナー「『第62回・麻美子のノート(2)』の巻

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