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2007.01.06

柳都物語  第53回・単独調査

【柳都物語 第53回・単独調査】

 放課後。
 おれは、ひとりで住吉神社に行った。
 いくら地図だけにらんでても、何も思いつかないってことがよくわかったからだ。
 2時間ドラマなんかで、ベテラン刑事がよく言うだろ。
 「迷ったら現場に戻れ」ってやつだ。

 何でひとりで来たのかって?
 奈美は、麻美子たちと一緒に理絵の見舞いに行っちまっただろ。
 マメオヤジを連れて来ようかと思ったんだけど、あのバカ、終わりの挨拶のあと、あっという間に消えちまいやがった。
 まさか女子どもにくっついて、理絵んちまで行ったんじゃねえだろうな?
 そんなんで、おれひとりで来たってわけ。
 まあいいさ。
 マメオヤジなんかと一緒だと、話が脇道にそれるばっかしで、ちっとも前に進まねえからな。
 ここは、おれひとりでじっくり考えて、あいつらがビックリするような答え、見つけてやろうじゃないの。
 え?
 方角石のある「現場」は4つもあるのに、何で住吉神社に来たのかって?
 確かにな。
 おれたちを悩ませてるのは、4つの方角石がつくる不思議な三角形の謎だ。
 三角形の頂点Aにあたる、ここ住吉神社。
 底辺BCの両端には、白山公園と水戸教公園。
 そして、頂点Aから底辺BCに垂直に引いた直線(つまり三角形の「高さ」の線)が、底辺とぶつかったところにある曙公園。
 方角石がある「現場」は、以上の4カ所。
 そん中でも、何たって住吉神社は、三角形の頂点Aだかんな。
 頂点だぜ、頂点。
 一等あやしい「現場」ってわけだろ。
 第一容疑者ってやつ?
 順番からいっても、やっぱAからだし。
 それにここ、学校から一番近いしな………。
 
住吉神社/階段の先に見える神社の屋根  神社の階段は、おとといの雪がまだ消えてなかった。
 手すりにつかまりながら登る。
 あれ?
 何かこのシチュエーション、前にもあったような………。
 変だな。
 この神社は、日曜に一度来たっきりだぜ(「第24回・住吉神社」)。
 あんときは、4人一緒だった。
 でも、何かひとりでこの階段を登ったような気が………。
 『デジャビュ』ってやつ?
 あっ、そうか。
 階段の先に見える屋根で思い出した。
 夢で見たんだ………。
 あの夢はたしか、どっべり坂を登ってたのが、途中から住吉神社に変わってた。
 理絵が、階段の下から見上げてた………。
 おれは、思わず後ろを振り向いた。
 もちろん、階段下には誰の姿も無い。
 何やってんだ、おれは。
 握った手すりに力を込めると、おれは階段を2段飛ばしに駆けあがった。

 登りきった頂上は、社(やしろ)のまわりにも、まだ雪が残ってた。
 でも、ここの方角石は厚さが30㎝くらいあるから、雪に埋もれてはいない。
 表面の雪はもう解けてた。
 つまり、この石が地震で回ったかどうか、証拠は残ってないってわけ………。
 いきなり手掛かり無しかよ。
 「現場」に戻ってはみたものの、やっぱ何も思いつかねえ。
 猫の額みたいな境内(境内って言うのか、これも?)は、立ってる場所から全部が見わたせる。
 町内会の物置小屋みたいな、ちっちゃな社(やしろ)。
 おれの足元には、方角石と並んで、やっぱり石でできた四角いマスみたいなもん。
 これって、神社によくある、手を洗ったり水を飲んだりするやつだろ?
 でも、ここのは水が入ってなくて、中は空っぽだ。
 まあ、こんなプリンのてっぺんみたいな所に、水道なんか来てねえだろうしな。
 あとは、墓石、じゃねえな、石碑ってやつか、そいつが3つ並んでる。
 プリンの上にあんのは、こんだけだ。
住吉神社/方角石  さーて、こっからどうする?
 仕方なくおれは、神社から見える景色に視線を移した。
 狭いんだけど、見晴らしだけはいい所だよな。
 海の方を見ると、新日和山の展望台にカラスが留まってるのが見えた。
 展望台から、何気なく足元の方角石に目を落としたおれは、背中から水を浴びせられたような気がした。
「南? そんなわきゃねえだろ」

【次回投稿は1月20日の予定です】→柳都物語「第54回・くるった方角

緑亥館通信「柳都物語・第53回について
物産コーナー「『第53回・単独調査』の巻

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