柳都物語 第37回・謎の三角形
【柳都物語 第37回・謎の三角形】
放課後、おれたち4人はじいちゃんの家へ行った。
きのう曙公園で方角石を見つけたあと、すぐじいちゃんちに電話したんだけど、夜遅くじゃないと帰らないって奥さんが言うんで、1日待ったんだ。
ゆうべはあれこれ考えて、よく眠れなかった。
もちろん、答えは皆目わからない。
「あんたがたには、探偵の才能があるんじゃないかな。まるで少年探偵団じゃな」
おれたちが方角石をもう1つ見つけたと言ったら、じいちゃんはそう言って笑った。
「でも、ほかの3つの石は『へ』の字の両端と頂点にあるんですけど、曙公園の石は、この線からは離れてるんです」
奈美が地図を指さしながら言った。
「そのようじゃな」
じいちゃんも地図を見て考えこんだ。
おれはもう、きのう考えすぎてたから、ぼーっと地図をながめてた。
寝不足のせいで、今日の算数の時間はさんざんな目にあった。
天津に、「こんな簡単な三角形の問題がわからんのか」って怒られちまった。
黒板に描かれた大きな三角形が目にうかんできた。
三角形?
「あっ」
おれは思わず声をあげた。
「何よ、尚樹? 急に大きな声出して」
「定規! 定規貸して! あと、赤鉛筆!」
奈美がランドセルから出した定規を引ったくると、地図にあてた。
「赤鉛筆! 早く!」
「何あわててんのよ?」
赤鉛筆をもぎ取ると、定規にそって線を引いた。
定規を90度回して、もう1本短い線を引く。
定規をゆっくりと地図から離すと、おれはみんなの顔を見まわした。
「何よ、これ? 鼻の穴ふくらましてないで説明しなさいよ」
「わかんねえのかよ」
「だから、何なのよ?」
「三角形だろうが! 今おれが引いた2本の線は、三角形の『底辺』と、面積を求めるときに引く『高さ』の線だ」
「あんたが今日、立ち往生した問題じゃないの」
「だから、日和山の住吉神社が三角形の頂点Aだ。白山公園と水戸教公園が残りの2点、BとC。そして今おれが最初に引いた線は、BとCを結んだ線、つまり三角形の底辺だ。そしてその線上に曙公園があるってことだろ」
「偶然じゃないの?」
「よく見ろよ、おれが引いたもう一本の線。この曙公園から、底辺に対して垂直な線を真上に引くと、頂点Aの住吉神社にどんぴしゃでぶつかるんだ」
おれは曙公園のところに、直角を表す『┐』印を書き入れた。
「なるほど。そのとおりじゃな」
どんなもんだ。
おれは奈美の顔を見た。
奈美はちょっと悔しそうな顔をした。
ざまみろ。
「ずいぶん平べったい三角形よね。でも、どっかで見たな、こんな形」
「ゲイラカイトじゃねえの? 西大畑公園で揚げてるの見たぜ」
マメオヤジが言った。
確かにそんな形だ。
新潟島の上を、日本海に向かって滑空してるようにも見える。
カイトの頭は北西を向いてた。
「ただ問題は、この形が何を意味するかってことじゃな」
「そうですよね。問題がわかっただけで、答えは全然わかってないんだわ」
奈美は、そう言うと地図の上にかがみこんだ。
1番に答えを見つけるつもりだな。
おれも負けじと三角形をにらみつけた。
しばらく、応接間には柱時計の振り子の音だけが聞こえた。
3つの方角石がつくる三角形。
住吉神社が、頂点A。
白山公園と水戸教公園がつくる、底辺BC。
底辺BC線上にある、もうひとつの方角石、曙公園。
そしてその曙公園から、底辺BCに対して垂直な線を真上に引くと、頂点Aの住吉神社………。
あー、頭痛てー。
ダメだ。
全然わかんねえ。
おれは、あきらめて顔を上げた。
奈美はまだ固まったみたいに動かない。
理絵とマメオヤジも、地図に目を下ろしたままだ。
やっぱ、おれってあきらめが早すぎんのかな?
玄関の方で、車のクラクションが鳴った。
眉根を寄せて考えてたじいちゃんが、顔を上げた。
「残念ながら今日のところは時間切れじゃな。会合があって出かけにゃならん。迎えの車が来たようじゃ」
奈美たちも、金縛りから解けたみたいな顔をした。
じいちゃんが、地図の三角形の部分をコピーしてきてみんなに配った。
「宿題のプリントじゃ。わしも、今日の会合は上の空になりそうじゃて」
【次回投稿は6月10日の予定です】→柳都物語「第38回・どっべり坂と地震雲」
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