柳都物語 第27回・その名は方角石
【柳都物語 第27回・その名は方角石】
奈美のマンションに戻ると、もう昼近かった。
「へ」の字の3点にある不思議な石について、おれたちは地図を囲んで考えこんだ。
だけどこんなこと、いくら考えたってわかることじゃない。
「こういう石って、他にもあるのかな? あんたたち、見たことない?」
おれとマメオヤジは首を横に振った。
「じゃ、この3カ所にだけあるの?」
「あるのって聞かれてもなあ」
考えこんでるうちに、お昼になっちまった。
奈美のおかあさんがスパゲッティをつくってくれた。
奈美のおかあさんにも石のことを聞いてみたけど、全然わからないそうだ。
奈美のおとうさんはスーパーマーケットの店長さんだから、日曜日は仕事に行ってる。
「天津先生のおじいさんなら、わかると思う」
理絵がめずらしく発言した。
そういえばこいつ、きのうから妙に静かだったよな。
「そうよね。尚樹、電話して」
「番号わかんねえよ」
奈美がハローページを持ってきた。
西大畑町の『天津亮吉』は、ちゃんと載ってた。
「それにしてもさ、あのおじいちゃんって天津と似てないよね」
「似てるのは、でかいことだけだよな」
「天津はさ、純日本人って感じでしょ」
「ていうか、古代日本人って感じだぜ」
「でも、あのおじいちゃんって外人みたいじゃない?」
「ところで、電話で聞くのかよ? 石のこと」
「地震調査の結果をご報告したいので、よろしければおじゃましたいんですって言うのよ」
じいちゃんは家にいた。
明日からまた旅行に出るんで、これから来てくれとのことだった。
じいちゃんちの応接室。
おれはさっそくテーブルに地図を開いた。
地図には、たくさんの×印が「へ」の字型に並んでる。
この×印は、きのうの調査で、水曜日の地震による揺れが確認できた地点だ。
「ほー。見事なもんじゃな」
「見事に並んでるでしょう?」
「それも見事じゃが、1日でよくここまで調べたと思ってな。いやはや大したもんじゃ」
じいちゃんは、おれたちの顔を見回しながら何度もうなずいた。
おれたちは大得意だった。
「今日、この×印の端っこにある水戸教公園に行って来たんですけど、そこでまた地震があったんです」
「やぐらから転げ落ちそうになりました」
おれたちは、さっきの地震のことを口々に言いつのった。
「ここらは全く揺れんかったぞ。やはり異常な地震じゃな」
「それで、この石なんですけど」
奈美がデジカメの液晶をじいちゃんに見せながら言った。
「これが住吉神社の石。こっちが水戸教公園の石です。×印の両端と頂点に、この石があるんです。白山公園のはまだ見てないんですけど」
「水戸教公園の石が回ったんです。今日の地震で」
おれがそう言うと、奈美は迷惑そうな顔でおれを見た。
「回ったと?」
「井沢くんと菊池さんは見たって言うんですけど、私は見てないんです」
「おれも見てねえよ」
マメオヤジが口をはさんだ。
「ものすごいスピードでベイブレードみたく回って、この青い線がかすんじまうほどでした。UFOみたいに飛びあがるんじゃないかって、そんくらい。でも、ちょっと目を離したすきに止まっちゃって」
「なんでそこで目なんか離すんだよ」
「おめーがバタバタ暴れたからだろ。奈美に首絞められて」
「失礼ね。首なんか絞めてないわよ。ちょっとつかまっただけじゃないの」
「とにかく、この石が回ったのは理絵も見てるんだ。な?」
おれは理絵に同意を求めた。
理絵はうなずいた。
奈美とマメオヤジは、まだ疑わしそうな顔をしてる。
おれしか見てなかったら絶対に信用されなかったろうな。
「これは方角石(ほうがくいし)というものじゃ」
「方角石?」
方角を描いた石だから方角石か?
なんか、そのまんまじゃねえの?
「何をする石なんですか?」
「もちろん、方角を確かめるための石じゃ」
やっぱりそのまんまだぜ。
じいちゃんは、おれたちのキョトンとした顔を楽しそうに眺めまわした。
【次回投稿は1月21日の予定です】→柳都物語「第28回・日和山と天気予報」
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