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2005.11.12

柳都物語  第23回・『へ』の字の謎

【柳都物語 第23回・『へ』の字の謎】

 日曜日。
 今日は、朝から奈美の家に集まることになってた。
 家っていってもマンションだけど。
 学校のすぐ裏の西堀通りにある。
 もちろん、地震調査の結果をつきあわせるためだ。
 きのう1日晴れたのがうそのように、今朝はまたどんよりとした雲が空をおおってた。
 雪が降ってないだけましってとこ。

 MTBはやめて歩いてくことにした。
 雪くらい降ったってチャリンコに乗れないわけじゃないけど、新潟の冬は風が吹くとやっかいなんだ。
 こないだの早川堀でもそうだったけど、まともに正面から吹かれたら、いくらペダルを踏みこんだって前に進まない。
 まあ、歩いても10分くらいだしな。
 で、西大畑公園の前まで来たときだった。
 大畑小に通うときは、この公園の中を突っ切っていくんだけど、奈美のマンションへはそれじゃ遠回りになる。
 正門前をそのまま真っ直ぐ通りすぎようとしたときだ。
西大畑公園/堀  また、いたんだ。
 キースが。
 堀のそばに。
 こっちに背を向けてたけど、ひと目でキースってわかった。
 2メートル近い長身を真っ黒なコートにつつんで、堀を見おろしてる。
 おれは、気づかれないように石垣の陰まで戻った。
 灰色の雲の下で、暗い水面を見おろす黒ずくめの大男。
 あやしい雰囲気プンプンだぜ。
 しばらく見張ってたけど、キースはただ堀を見てるだけだった。
 背中をまるめて、コートのポケットに手を入れて、何もない水面を見つめてる。
 なんだか寂しそうだった。
 知らない町に来て心細いのかもな。
 やべ。
 こんなことしてたら遅れちまう。
 また奈美に文句言われるぜ。
 おれは小走りで正門前を通り抜けた。

 奈美の家のチャイムを押すと、おかあさんが出てきた。
「あら尚樹ちゃん、いらっしゃい。久しぶりじゃない? どうしてたのよ。このごろちっとも来なかったじゃない?」
西堀通り/奈美のマンションあたり  中学年のころまでは、けっこう奈美の家に遊びに行ってたんだ。
 なにしろ学校の近くだし、マンションの窓からの眺めもいいから、おれだけじゃなくて、みんなのたまり場みたいになってたってわけ。
 でも、高学年になると、男子はあんまり奈美の家に行かなくなった。
 奈美を筆頭に女子どもの図体がでかくなり、いっしょにいると気圧されるような気がして、自然と足が遠のいたんだ。
 女子は相変わらず集まってるみたいだけど。
 リビングに入ると、理絵とマメオヤジはもう来ていた。
「遅いじゃないのよ」
 奈美がにらんだ。
「悪い悪い」
 リビングのテーブルには、例の地図が広げられてる。
 地図には、もう赤い×印がたくさん書きこまれてた。
 広小路から南、奈美と理絵の担当区域だ。
「尚樹よー。変だぜ、これ」
「絶対に変よ。早くあんたたちの調査結果を見せてよ」
 おれは、きのうのノートを開いた。
 おれが番地を読みあげて、奈美が地図に×印を入れていく。
「これで最後」
 窪田町2丁目の番地を読みあげて、ノートから顔を上げた。
 奈美も、最後の×印を書きこむと顔を上げた。
 目がらんらんと輝いてる。
「マジかよ」
 マメオヤジが、めずらしく真面目な声をだした。
 地図の上に、×印が一直線に並んでる。
 ただ、その直線は途中で折れ曲がってた。
 つまり、『へ』の字の形だ。
「湊小のあたりじゃねえか? 曲がってるの」
「少しずれてんじゃない? ちょっと待ってて」
 奈美は、自分の部屋から定規を持ってきた。
 地図に定規をあてると、×印を結んで2本の線を引いた。
 その交差したところが「へ」の字の頂点だ。
「ほら、湊小からは、ちょっとずれてるでしょ」
「住吉神社ってのがあるぜ。ちょうどそのあたりだ」
「あんたたちの調査区域でしょ。どんな神社だったの?」
「神社なんて、あったか?」
 おれとマメオヤジは顔を見合わせた。
「うかつなやつらね」
 天津の決めゼリフ「うかつなやつ」を奈美に決められちまった。
 おれたちは腕組みして考えこんだけど、さっぱりわからない。
 奈美がすっくと立ちあがった。
「とにかく行ってみよ」
「どこへ?」
「きまってるじゃない。住吉神社よ」

【次回投稿は11月26日の予定です】→柳都物語「第24回・住吉神社

緑亥館通信「柳都物語・第23回について
物産コーナー「『第23回・『へ』の字の謎』の巻

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