柳都物語 第8回について
「柳都物語・第8回」『ドッジボール(2)』、いかがでしたでしょうか?
第7回・8回と、2回続きでドッジボールのお話になりました。
2回に分けるほど長いシーンになるとは思っていなかったのですが、書いているうちに長くなって、2回分の分量になってしまいました。
ひとつのシーンなんだから1回で載せろと言われるかも知れませんが、なにしろ先の見通しが立ってない状態ですので、貴重な時間稼ぎになってくれました。
ドッジボールのルールブックを読んだわけでもないので(そんなものがあるのでしょうか?)、ルール的な細かいことを突っこまれると困るのですが、インターネットで検索してみると、けっこうローカルルールのあるスポーツ(遊び)のようなので、あんまり気にしないで書きました。
もちろん、ドッジボールは私の小学校時代(三十数年前)にもありました。「柳都物語」の尚樹は、ドッジボールが得意な少年ですけど、私はそうではありませんでした。マメオヤジがボールに背を向けて逃げる場面がありますが、まさに私がそうでした。ジグザグに逃げると案外あたらないものです。
話は変わります。
これを書いている今、新潟市のソメイヨシノが満開です。
近年としてはずいぶん遅い開花でしたが、私の子供のころは、だいたいこの頃だったように思います。
小学校、中学校、高校と、私にとって4月は憂鬱な月でした。
新しい環境に適応するのが苦手な私にとって、新学期はいつもつらい季節だったのです。そのころ、窓の外には必ずサクラが咲いていました。そのため、今でも満開のサクラを見ると、子供時代の物悲しい気分がよみがえってきます。
「柳都物語」の主要舞台のひとつである西大畑公園にも、たくさんのサクラがあります。特に、一段高くなったグランドには、周囲の石垣に沿ってぐるりとサクラが並んでいて、天気の良い日には、花見のシートがたくさん広がります。
植えられているサクラは、最もポピュラーなソメイヨシノなのですが、中に1本だけ花色の違うサクラがあるのです。
花はソメイヨシノより一回り大きく、純白です。薄緑色の葉が花といっしょに開いていて、とても涼しげな感じがします。
ご存じの方も多いかと思いますが、ソメイヨシノという品種は、オオシマザクラとエドヒガンの自然交雑から生まれた1本から、挿し木や接ぎ木によって増やしていった、いわばクローン種です。つまり、ソメイヨシノは、すべて同一の個体であるといってよいのです。そのため花期が見事にそろって、花見にはうってつけということになります。
この花色の違うサクラは、ソメイヨシノの片親であるオオシマザクラの特徴を多く備えています。花が純白で、ソメイヨシノより大きいこと。花といっしょに葉が出ていること。花柄が長いこと。葉はもちろん、花柄や萼まで緑色であること。などなど。
それでは、本当にオオシマザクラなのでしょうか? でも、ここに1本だけオオシマザクラを植える理由が見あたりません。この木のまわりを見ても、記念植樹のような標柱もありませんから、わざわざ1本だけ違うサクラを植えたとは思えないのです。
それに、純粋なオオシマザクラにしては、少し妙な点もあります。樹冠を見渡すと、花びらがほんのりと桃色がかっているところがあること。オオシマザクラの花は、そばに寄るだけで香りがするはずなのに、この木の花は、鼻をくっつけてようやくかすかに匂う程度であることなどです。このような変異は、自然交雑をくりかえす野生状態のオオシマザクラにはよく見られることです。つまりこのサクラは、実生から育った木ではないかと思えるのです。
おそらく、グランドにソメイヨシノが植えられるとき、1本だけ変な苗がまぎれこんでいたということなのでしょう。生産者の畑で自然交雑からできた種が、クローン苗の畑に落ちたのではないでしょうか。
このサクラに気がついたのは、2,3年前だったと思います。花の咲いていない時期は、この1本とほかのソメイヨシノを区別することはできません。それが、花の時期だけ、1本だけ違うことがわかるのです。何だか象徴的だと思いませんか。普段はまわりに埋もれて目立たない人が、ある時期、突然人と違う輝きを見せるといったような。
このサクラのことを、「柳都物語」でも書きたいのですが、なにしろ「柳都物語」は、まだ真冬のまっただ中です。
はたして「柳都物語」に春は来るのでしょうか。
それでは次回の「柳都物語」をお楽しみに。4月30日、掲載予定です。
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